みどりのゆび 愛蔵版
平和を祈る名作の愛蔵版。ずっと手元に置いておきたい美しい一冊
「みどりのゆび」は、フランスの作家モーリス・ドリュオンが1957年に発表した童話。日本では、岩波少年文庫から刊行され親しまれていますが、今回紹介するのはその愛蔵版です。
お話の主人公は、お父さんとお母さんに愛されて裕福な家庭で育つチト。親指を触れるだけで、緑を芽吹かせ花を咲かせてしまう「みどりのゆび」をもつ心優しい少年です。学校ではどうしても眠り込んでしまい、「他の子と同じではない」という理由で家に帰されてしまいますが、庭師のムスターシュおじいさんや、子馬のジムナスティクと心を通わせながら、人生から多くのことを学んでいきます。あるとき、優しいお父さんが経営する兵器製造工場で作られる大砲が戦争に使われていることを知ったチトは、自分ができることを考えて行動にうつします。印象的な結末も含めて、単なるファンタジーでは終わらない、純粋で哲学的な問いと詩的な表現で平和を祈る名作です。
チトは、世界をもっとよくするために自分ができることを考えますが、その行動のあとには、たくさんの美しく個性的な草花が生い茂り、それはやがて、自分の住む町ミルポワルを花の町に変え、大人の古い考えも変えていきます。愛蔵版では、カラー挿絵もふんだんにあしらわれ、その素晴らしい描写は何度見ても胸がいっぱいに。
しっかりとした箱入りで、きみどり色のクロス装、栞にもみどり色のリボンがあしらわれた丁寧なつくり。表紙には「TISTOU」(チト)の刻印、背表紙には日本語のタイトルとチトが耳をすましているイラスト。この本自体が静かな祈りに満ちていて、愛蔵版だからこそ伝わるものがあるように思います。
岩波少年文庫で読んだことがあるかたにも、子供の頃児童文学を読んでこなかったかたにも。 全ての子どもたちが安心して暮らせる世界になりますように・・・そんな祈りとともに、今だからこそ多くのかたに手に取ってほしい1冊です。贈り物にもおすすめ。
・自分で読むなら:小学4年生くらいから
・大人にも出会い直してほしい1冊です◯
みどりのゆび 愛蔵版
著者:モーリス・ドリュオン/作、ジャクリーヌ・デュエーム/絵、安東次男/訳
出版社:岩波書店
ページ数:206ページ
仕様:A5変・上製・函入
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