みどりの王国 The Kingdom of Green/戎康友、鈴木るみこ
美しいイギリス庭園と、庭仕事を愛するガーデナーを巡るルポタージュ
「人はなぜ庭に憧れ、庭を作るのだろう。」
そんな想いを発端に、世界一美しい庭の国と言われる“みどりの王国”=イギリスを訪ね、写真家の戎康友さんがポートレート写真を、編集者・文筆家の鈴木るみこさんがテキストで記録した、イギリス庭園のルポタージュ。雑誌『ku:nel』の連載を書籍化したのが本書です。
サリー州のウィズリーガーデン。コッツウォルズのバーンズリーハウス庭園。イエローブック(個人のオープンガーデンが一覧として掲載されているイギリスの冊子)を片手に訪れたコッツウォルズの個人庭園・・・3度の渡英で訪れた、10か所あまりの庭園。見開きの大判カラーで収録された戎さんの写真に写っているのは、生命力溢れる、調和の取れた美しい庭と、その手入れをする“みどりのゆび”の持ち主たち。
みどりのゆび:美しい花を咲かせ、植物をよく育てる人は神様から“みどりのゆび(green fingers)”を授けられたと讃えられる。
イギリスの庭づくりの歴史にも想いを馳せながら、ガーデナーたちへの取材を丹念にテキストに起こした鈴木さんの文章を読んでいると、自然に人の手が入った「庭」という場所、特にイギリスにおけるその奥深い魅力と、ガーデナーの仕事に情熱を傾ける人々が持つ美学がひしひしと伝わってきます。
「リチャードは、木漏れ日差す夕暮れ時にそこに立つと、自分がとてもちっぽけに思えて、他のすべての存在に感謝する気持ちになると言っていた。Respect the place。ふと、美しい庭というのは、地上でいちばん天国に似ている場所なのかもしれないと思う。」
「庭ぜんぶが彼になついている。子供ではないから、それを『みどりのゆびの魔法』とはもういわないでおこう。彼は長くそこの植物たちを知ろうとつとめてきた。そして、彼らをよく知っているだけなのだ。」
美しい庭と、そのまわりで幸福そうな人々。2人が庭を巡って旅を続けた理由はきっとそこにある。人を惹きつける庭の魅力にどっぷりと浸れる1冊。
みどりの王国 The Kingdom of Green/戎康友、鈴木るみこ
著者:戎康友、鈴木るみこ
アートディレクション:有山達也
出版社:青幻舎
ページ数:144ページ
仕様:A4変28.5×22