わたしを空腹にしないほうがいい 改訂版/くどうれいん

わたしを空腹にしないほうがいい 改訂版/くどうれいん

どんなときも食べて、書いて、生きていく。食を愛する作家の日記エッセイ

なんだか挑発的にも聞こえるタイトルのこの小さな本は、小説家、歌人、俳人のくどうれいんさんが2016年6月に綴った「食べること」にまつわる文章をまとめたリトルプレス。くどうさんの地元である岩手県盛岡の書店「BOOKNERD」が発行元で、リトルプレスとしては異例の発行数1万部以上のベストセラーに。日記形式のエッセイはどれもが1ページ、または見開き2ページに収まる短い文章で、そのタイトルはくどうさんらしい「俳句」のかたちでつけられています。

ひとり暮らしの生活や、いつかの誰かとの思い出、楽しい日々もそうでないときも、「食」を中心に綴られ、食べることへの愛と飽くなき探究心がその文章から透けて見えるよう。

1か月分の日記を振り返って、「自分がどれだけ書くことと料理をすることに救われているのかわかっておどろく」と記しているくどうさん。こちらの改訂版には、その1年後、社会人になった2017年のくどうさんの日記も収録されています。

「わたしを空腹にしないほうがいい。もういい大人なのにお腹がすくとあからさまにむっとして怒り出したり、突然悲しくなってめそめそしたりしてしまう。昼食に訪れたお店が混んでいると友人が『まずい。鬼が来るぞ』とわたしの顔色を窺ってはらはらしているので、鬼じゃない!と叱る。ほら、もうこうしてすでに怒っている。さらに、お腹がすくとわたしのお腹は強い雷のように鳴ってしまう。しかもときどきは人の言葉のような音で。この間は『東急ハンズ』って言ったんですよ、ほんとうです、信じて。」

「ようやく人生のことがわかってきた。(あと何度こういうことを言えば気が済むのだろうか、わたしは。)人生は結構、わがままにやるやつの勝ちで、もう一方は何らかの形でそれを許す以外の選択肢がなく、あとはいかにかっこよく、美しく許してやるか。という側面があるのではないか。そうだとしたら、わたしはいま、好き放題やってきた代償として、こんどはいかに許してやるか試されているのかもしれない。」

くどうれいん
作家。1994年生まれ。著書にエッセイ集『わたしを空腹にしないほうがいい』(BOOKNERD)、『桃を煮るひと』(ミシマ社)、絵本『あんまりすてきだったから』(ほるぷ出版)など。初の中編小説『氷柱の声』(講談社)で第165回芥川賞候補に。現在講談社「群像」にてエッセイ「日日是目分量」ほか連載多数。

わたしを空腹にしないほうがいい 改訂版/くどうれいん

著者:くどうれいん
出版社:BOOKNERD
ページ数:78ページ
仕様:文庫判・ソフトカバー

わたしを空腹にしないほうがいい 改訂版/くどうれいん
わたしを空腹にしないほうがいい 改訂版/くどうれいん
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