ははがうまれる/宮地尚子
世間と自分の「完璧な母像」から解き放ってくれるヒントのことば
多くの人のトラウマと向き合ってきた精神科医・宮地尚子さんが子育てや日々を綴ったエッセイ。子どもを産んだことで母になるのだけれど、決して今までの自分から「母」に塗り替えられるものではなく、自分自身の上に重ねられたレイヤーのようなもの。
それなのに「母」というだけで優しく温かく慈愛に満ちた存在でいなければ、と周りから、そして自分自身からもプレッシャーをかけてしまう。母になって変わった自分、変わらない自分、その本質を全て丸ごと受け止めてくれる言葉が散りばめられています。
「赤ちゃんの泣き声を聞くとイライラしてしまう。そんな自分が嫌」と悩む女性に「人間を含めた脊椎動物は高周波の泣き声などは緊急の警戒を呼び起こすもの。脳の中の警戒システムが作動するのだから自然な反応」と答える。さらに「養育者にとっても泣き声はストレスであり、その上、周囲からも(泣く止ませろという)ストレスを受けている事実がある」と語ってくれる。
子どもの有無やストレスを許容できるか、などで人間力を試されているかのような重圧から解放される人、救われる人は少なくないだろう。 著者自身が「昔は子どもが嫌いだったんだよ。でも産んでみるとおもしろい。」「大丈夫。好奇心で産んでもいいの。おもしろがって一緒にいればいいの。」(P54)そんな言葉に後押しされると、母になる道に力をもらえます。
産んだことで生まれる「はは」。ゆっくり子どもと成長していきたい、と思わせてくれるヒントがたくさん詰まった1冊です。
ははがうまれる/宮地尚子
著者:宮地尚子/著、呉夏枝/絵
出版社:福音館書店
ページ数:176ページ
仕様:B6判
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