一緒に生きる 親子の風景/東直子

一緒に生きる 親子の風景/東直子

育てるんじゃなくて、一緒に生きる。
日々の慌ただしい子育てに優しい光が灯るエッセイ

歌人・東直子さんが綴った子育てにまつわるエッセイ。子育て中の方、子育てがひと段落した方、どんな人が読んでも1章1章共感してしまいます。タイトルの通り、私が彼らを育てているわけではない「一緒に生きる」そのものの世界。

二人の赤ん坊を育てながら鉛筆で原稿用紙に書き綴り投稿し、初めて雑誌に掲載された
「子供らが散らかした部屋を抜け出して何を探そうとしていたのだろう」
という一句。もう、これだけで今そこに自分がいるかのような錯覚に陥るほどリアルで切羽詰まっていて閉塞感を感じます。日々の子育てに楽しさをと充足感を得ていても、時折感じる感情が短い言葉に込められていて、それは文章でも同じ。
育児本やエッセイにありがちな「こうすべき!」のような説教くささは一切無く、全てのお母さんに寄り添います。子育ての先輩がこっちおいで、と引っ張ってくれてるというより、横にいて肩をたたいて「わかる、そういうことあるよね、でも大丈夫だよ。」と励ましてくれているよう。

「子どもが成長して、新たな世界へと一歩を踏み出す。とてもめでたいことなのに、あんなに涙が流れるのはどうしてだろう。うれしくて、さみしい。よろこばしくて、かなしい。」(P49)
「お母さんも人間。子どもも人間。生きているから傷つくけれど、生きているからやり直せる、くらいに思いつつ、適当に、かつ繊細に、毎日を過ごしたいと思う。」(P56)
この言葉にどれだけの人が救われるだろう。何気ない日々のエピソードに微笑みながら何故か涙が流れてしまう、そんな不思議な力を持ったエッセイ集です。

それぞれのページに差し込まれたイラストレーター・塩川いづみさんのイラストもなんともかわいらしい。 巻末の、作家・山崎ナオコーラさんとの対談も必読です。

一緒に生きる 親子の風景/東直子

者:東直子/著、塩川いづみ/絵
出版社:福音館書店
ページ数:240ページ
仕様:四六判ハードカバー

一緒に生きる 親子の風景/東直子
一緒に生きる 親子の風景/東直子
¥1,760
9784834086645
在庫:3