鉄という素材自体は硬くて無骨なイメージがあるけれど、細く華奢なかたちになるとそのイメージが変わることを知りました。その鉄にペーパーコードの自然素材が交わると、またガラリと変わり、かっこよくも、美しくも、どんなふうにも取れるニュートラルな印象に。この一脚を置くだけで、これまでの何かが変わり、空気まで澄んでしまう気がするから不思議です。

奥さまで料理家の中川たまさんのアトリエ、Atelier Limをご自身で手がけたときに、その空間に合うようにと、この椅子が生まれました。そんな椅子をたくさんの方からも愛される椅子にと、ご祖父様の代から続いている鉄鋼所でひとつひとつ丁寧に製作されています。座面には国産和紙のペーパーコードを使い、手間をかけて細かく編んでいく。その工程を考えると大事に思う気持ちもひときわ深まります。

時間を忘れて黙々と作業をしていても、背もたれがないのになぜか全く疲れなかったんです。ペーパーコードがやさしく、しっかりと支えてくれて、見た目の華奢さからは想像できない包容力を実感します。 封筒編みと呼ばれる、名作椅子にも使用されている編み方をした座面は、中央に向けてゆるやかに低くなっていくのでお尻にフィットする感覚があり、座面も幅40cm、奥行き30cmと広々。ダイニングや作業台など、身近な場所にも置いていただきたい一脚です。

限られたスペースで、ちょっと腰を掛けたいときにもちょうど良く、そっと佇む姿も美しい。線が細くて主張しすぎないから、どんな空間の中にあっても上手にバランスを取ってくれますよ。
木、石、紙、鉄、のような異なる素材がミックスされた空間をどこかで見たとき、とても素敵だったから「あんなふうに合わせてみようかな」と、うっとり考えてしまいます。