ゴールディーのお人形

ゴールディーのお人形

自分の仕事をして生きる喜び。大人にこそ読んでほしい一冊。

この本の著者であるM.B.ゴフスタインが本の中で表現しようとしているのは、「自分が信じるすばらしい何かを作り出すために黙々と働く人の美しさと尊さ」なのだそう。この本は、著者の作品の中でもそれを最も表現できている一冊だと思います。

お人形作りを生業としている少女ゴールディーは、亡くなった両親から受け継いだその仕事を信念をもって続けています。まず、お人形を彫る木は、四角く切られた木端ではなく、森で拾った枝を使うことを大事にしています。そうじゃないと、「本物のような気がしない」し、「彫っていても面白くない」し、「生きているような気がしない」から。自分が作る小さなお人形に責任がある気がして、寝ても覚めてもお人形のことを考え、命を吹き込んでいきます。そんなふうにして作られたお人形は、お店にあったら誰もが買わずにはいられない、持つ者を笑顔にする特別なお人形になります。

自分の感覚と信念に忠実に、ひたむきに創作に打ち込むゴールディー。お話を読み進めていくと、自分の仕事をして生きる喜びが、わたしたちの心の奥底からも湧き上ってきます。

そんなゴールディーですが、お話の後半では、とあることから自分を見失いそうになります。どんな人にも一度は経験があるような、自分の判断に自信を失い、自分がどうしようもない人間に思えるあの瞬間。本当に心底寂しく思う気持ち、心が疲れてしまって粉々になったようなあの感じ。ゴールディーもそんな思いに苛まれますが、不思議な夢を見て自分を取り戻します。その夢は、心ある仕事をするもの同士の魂の交流で、それは、ゴールディーが真摯にものづくりを続けてきたからこそ見ることができた夢でした。会ったこともない誰かのことを想ってものづくりをすること、そのための仕事であり、生き方であること。
自分がしてきたこと、しようとしていることに改めて気付けた最後の場面では、ゴールディーの心からの笑顔と素敵な部屋の様子が描かれ、読み手の心にもポッと灯りが点るようなとても温かな結末を迎えます。

絵本という形ですが、大人にこそ読んでほしい。自分が信じるものを見失いそうになる時にそっと励ましてくれる一冊です。

・自分で読むなら、小学中学年以上から。
・特に大人のかたに、とてもおすすめです◎

ゴールディーのお人形

著者:M.B. ゴフスタイン/著、末盛千枝子/訳
出版社:現代企画室
ページ数:64ページ
仕様:16×18cm

ゴールディーのお人形
ゴールディーのお人形
¥1,650
9784773813142
在庫あり