シンプルの中に“らしさ”が光る
美しく厳かな

abekiの食器とカトラリー

宗教建築にインスピレーションを受けた、フォークやスプーンの持ち手のデザイン
並べた時に統一感のある気持ちの良いフォルム
コーヒーが一番美味しく飲める薄さのカップの淵

そこかしこにこだわりを感じる、“abeki”の食器とカトラリーたち。
おやつの時間にほどよい緊張感とあたたかさをもたらす
美しく厳かな“abeki”らしいプロダクトです。

Photo:Haruki Anami

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心をリセットできる教会のような場所を
“abeki”の世界と、店主のこと

車が行き交う大通り沿いの一角にこじんまりと佇む、チーズケーキが有名な福岡の人気店“abeki”。

abekiのドアを開けると、心が洗われるような聖歌のBGMが流れ、宗教建築にも見るアーチ型のパントリーへの入り口が目に飛び込んでくる。

真っ白なアウトフィットを身にまとった店主の棈木(あべき/※ 棈(あべ)の漢字は木へんに青)さん。
そこはまるで厳かな空気が漂う教会のよう。

「幼少の頃に通っていた教会のほどよい緊張感とあたたかさ、澄んだ空気が好きで、そんなお店が作れたらいいなと思っていて。このアーチ型はロゴにも使っています。オリジナルのカップやカトラリーのハンドル、プレートの縁の断面図にも実は使っていて、全体の統一感を出しています」

お店のコンセプトにある、「お客さまが心をリセットできる場所であること」の言葉通り、あべきさんの創り出す世界は、外の大通りのような私たちの日常の喧騒を忘れさせてくれる。
メニューも店の雰囲気や食器と同じで、こだわりのあるものを数品と、あくまでもシンプル。
その統一性が非日常的で、心地よく、また足を運びたくなる理由なのかもしれない。
今では常連のお客以外にも、国内外から、abekiの世界を見てみたいとやって来る人たちが、店の外に長蛇の列を作っているのがおなじみの光景となっている。

そんなabekiのオリジナルプロダクトを、“くらすこと”でお取り扱いをさせていただくことになり、お話しをうかがわせていただくことになった。

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「パキスタンのシャルワール・カミーズにインスピレーションを受けた制服をデザインする時にも、中近東に足を運んで現地ではどんな風に着られているのかを見に行ったんです」

何をするにも自分の目で見て、そこの雰囲気を感じてからと話すあべきさん。

そのストイックとも言えるほどのこだわりを持った彼がデザインする食器やカトラリーは、彼らしいストーリーがバックグラウンドにある。

最初に作ったのは、コーヒーや紅茶を注ぐカップ。
元々は作家さんに頼んでお店のオリジナルを、デザインから作ってもらっていたのだとか。




「作家さんが作り出す手跡の残るような作品をabekiのオリジナルと呼ぶことに、次第に違和感を感じました。だったら、一から自分でデザインして、一つひとつに特徴がある食器ではなくピシッと揃ってる食器を作ってみたいと思ったんですよね」

そう思い立ち、佐賀県は有田町にある十数軒の窯元へカップのスケッチを片手に直談判へ。
口当たりの良い磁器でつくりたい!形はこれで!という、作陶については全くの素人だった彼の言葉に耳を傾けてくれる窯元は少なかったとあべきさんは言う。

「きっと詳しい人にやってくれそうな窯元を紹介してもらえば早かったのですが、そうではなくて自分で一軒一軒あたって、この人とならやっていける!というところと出会いたかったんですよね。」

そして、「やってみようか!」と、そのうちの一つの窯元があべきさんのコンセプトを受け入れてくれ、それから1年弱でabekiのカップは商品化された。

またカップと同じく、オリジナルで作ってきた制服、プレート、カトラリー、お持ち帰り用のパッケージも全て、自分の足で制作会社をまわるところからスタート。

そのやり方を時間がかかりすぎて非効率的だと言う人もいるかもしれない。
でも、彼はそこに自分のこだわりを持ち、「責任」や「誠実さ」さえも感じる方法で自分の世界観を表現し続けている。

それは、彼の店づくりや働き方、生き方にも通じるものがあった。

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5年ほど前、あべきさんが想像していた以上に人気店になったことを機に、彼が考えていたお店のイメージが良い意味でも悪い意味でも崩れた。
それは、店の看板商品であるチーズケーキを食べに、または彼の作る世界観を一目見ようと世界中からお客さまが来店するようになった頃。

「1人でお店をまわしているので、どうしてもお客さまをお待たせしてしまいます。それがとてもストレスで。こんなに並んでいただくお客さまがいるのだから2号店を!という話しもあったりしますが、でも2号店を誰かに任せてというのが、またすごくストレスになると思うんです。長く続けていくためには、自分のペースを守り、いかにストレスのない毎日を送れるかというのが大事だと思ってます」とあべきさん。

店の営業時間も一般的な喫茶店やカフェよりは短い6時間に短縮して、自分のペースを優先させてストレスを減らし、お店の営業もオリジナル商品の販売も息切れしないように。
ゆずれないこだわりがここにもある。

このこだわりは、現代のストレス社会に生きるわたしたちがお手本にしたい在り方。
何を優先させて、何を削り落としていくのか。
そうすることで、もっと自分らしく、心軽やかに生きられるのだろう。
あべきさんのお話しを聞きながら、そんなことを思った。

教会の窓から差し込む一本の光のように筋の通ったあべきさんの生き方は、お店やオリジナル商品で見るabekiの世界を通して、これからも世界中の人を魅了し続けていくことだろう。

◉abeki
住所:福岡県福岡市中央区薬院3-7-13 
Tel:092-531-0005
URL: http://abeki-f.blogspot.com/