編めば編むほどわたしはわたしになっていった/三國万里子
三國さんの編むニットのように繊細に力強く綴られたエッセイ
ハンドニットのデザイナーである三國万里子さん初のエッセイ集。幼少期の話、思春期のまわりに馴染めなかったあの頃、東京に出てきて初めてのバイトに、東北の旅館で働いた経験、そして結婚に子育て。三國さんのこれまでの人生が順不同で綴られていて、読み進める毎に今自分もそこに居るかのような錯覚に陥ります。
一人の女性の人生の面白さと奥深さ、そしてあまりに繊細でかっこいい、そして巧みな文章に驚かされ、三國さんの作品や編み物本がお好きでこちらを読むと、いい意味で裏切られるでしょう。
第1章の「三國さん」。これだけで多くの方の心を掴むはず。エッセイなのだけれど、1遍の短編小説のような流れと展開に、そのまま一気に読み進めてしまう素晴らしさです。
一人暮らしの不安で切ない思い、家族とのやりとりの中で嬉しくて温かくなった気持ち、アンティークの華奢な時計や骨董屋で見つけたくたびれたうさぎのぬいぐるみなど素敵なモノに出会ってしまった時の興奮と喜び、それら全てを一緒に経験していくような不思議な感覚。
まさにその感覚的なものや感情の機微を、もの作りを通して表現してこられた方だからこそ、あんな素敵な作品が生まれるのだろう、と納得する1冊です。
編めば編むほどわたしはわたしになっていった/三國万里子
著者:三國万里子
出版社:新潮社
ページ数:232ページ
仕様:四六判
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